今回は、行政書士の「実務」に関する記事です。
行政書士の実務はどうやって覚えればいいのか?
という疑問について、行政書士の資格で開業した経験から解説します。
行政書士試験に合格したものの、実務経験がないために開業をためらっているという方も少なくないと思います。
私も実務経験がない状態での開業でしたので、その気持ちがすごく分かります。そんな私が、開業後どうやって実務を覚えてきたのかを本記事でご紹介します。
行政書士の実務はどうやって覚えればいいのか?
実務を覚えるには次のような方法があります。
- 書籍
- YouTube
- 申請先(官公署)のホームページ
- 行政書士のホームページ
- 研修会・勉強会
- 先輩行政書士
- 実務セミナー
順番に説明します。
書籍
書籍に関しては、メインとする取扱業務が決まっているなら、あらかじめ良さそうな専門書や実務書を購入して読んでおきましょう。
依頼を受けてからでは遅いですからね。
書籍を購入するポイントとしては、素人向けに書かれた絵や図が多い「内容が分かりやすいもの」と実務者向けに書かれた「専門書・実務書」の2冊を買うようにしましょう。
理由は、行政書士試験に合格する知識があるとはいえ、知識のない分野の専門書や実務書は内容が難しく挫折する可能性があるからです。
内容が分かりやすいものを先に読んで、全体を把握してから専門書や実務書を読むのがおすすめです。
そのほうが格段に理解しやすいです。
審査基準と専門用語
書籍では、その業務に必要な「審査基準」と「専門用語」は、しっかりと理解して覚えるようにしましょう。
依頼人は、審査基準などが分からないから行政書士を頼っているわけです。なので、審査に通りそうなのかの判断は真っ先に求められます。
そこを曖昧にすると、頼りなく思われ、信用を失う可能性があるので注意です。
専門用語は、分からないことがあって関係機関に問い合わせをする時に役立ちますので、覚えておきましょう。
YouTube
最近は、YouTubeの情報もバカにはできません。
その道のプロが、ノウハウを無料で公開していますからね。
行政書士に関しても同じで、自分の専門とする業務について現役行政書士が詳しく解説をしている動画がいくつもあります。
私もよく見るのですが、先日視聴した入管業務の動画はとても役に立ちました。有料でもいいくらいの情報が、自宅のパソコンで無料で見られるのですからすごいですよね。
申請先(官公署)のホームページ
行政書士の場合、申請先は官公署になることが多いです。
官公署のホームページには、その申請についての情報がたくさん掲載されています。実務に直結する情報が多いので、申請する前に必ず確認するようにしましょう。
「手引き」などがあれば印刷して読み込みます。
分からないことがあったら問い合わせます。
行政書士のホームページ
同じ業務を取り扱っている、行政書士のホームページも参考になります。
特に、お客さんに向けた「依頼を受けたときの流れ」などは、初めての業務をスムーズにすすめる為の参考になります。
いくつかの行政書士のホームページを参考にして、自分専用の流れを作れば、お客さんにストレスを与えることなく業務を遂行できます。
研修会・勉強会
研修会や勉強会には、いくつか種類があります。
- 都道府県の行政書士会が開催しているもの
- 行政書士会の支部が開催しているもの
- 有志が集まって開催しているもの
どれも参加するのがおすすめです。
行政書士会が開催しているものは、ベテランの行政書士が講師となることが多いので、専門書や実務書にも書かれていないような有益な情報が手に入ることもあります。
ただし、プロの講師ではなく、あくまで同業者である行政書士が講師なので、正直なところ「当たり外れ」があります。
それと、研修会や勉強会で配布された資料は必ず保存しておきましょう。私が新人研修の際にいただいた資料は、とてもよく作られていたので現在でも目を通すことがあります。
先輩行政書士
先輩行政書士と仲良くなると、実務で分からないことがあったときに教えてもらうことができます。
仲良くなる方法としては、支部活動への参加です。積極的に支部活動に参加していると、顔と名前を覚えてもらえ、分からないことを質問しやすくなります。
ただし、注意点があります。
先輩行政書士は、あくまで好意で教えてくれているので、絶対に失礼があってはダメです。
「先輩行政書士」とは言っても会社での先輩とは違います。本来、新人に実務を教える義理はまったくない人ですからね。
礼儀を持って接するようにしましょう。
実務セミナー
インターネットで検索すると、様々な団体が「行政書士の実務セミナー」を開催しています。
そういったところで実務を教わるのも、ひとつの手です。
ただし、実務が分からない新人行政書士から、お金を取ることだけを目的とした「ひよこ食い」もあるので、実務セミナーに参加する際には、主催者をしっかりと調べることが必要です。
不安な方は、大手の資格の予備校が開催している「実務講座」がおすすめです。
依頼を受任しながら実務を覚えていく
実際のところ、実務経験なしで開業した人は、ここまで説明した方法で必要な情報を集めつつ、同時進行で実務をこなしていくしかありません。
「しっかりと実務の勉強をしてから依頼を受けたい」
という意見もあると思いますが、そんなことを言っていると、いつまでたっても行政書士の実務ができるようにはなりません。
それに、依頼を受けながら分からないことを調べていったほうが、机で勉強している何倍も仕事を覚えられます。
他の行政書士事務所で実務の経験を積む
できれば、他の行政書士事務所で実務を経験してから開業が理想ですが、行政書士事務所の求人はほとんどありません。
都心部を中心に離れるほど、求人数が少ないのが現状です。
まったく求人がない地域もあります。
行政書士の実務で必ずやったほうがいいこと
ここでは、私が行政書士の実務で必ずやったほうがいいことをご紹介します。
- 依頼人への説明の練習
- 依頼人への連絡方法の確認
- 依頼を完遂したら記録を残す
順番に説明します。
依頼人への説明の練習
前職が営業職だったなど、話すのが得意な人は読み飛ばしてくれていいです。苦手な人は、依頼人へ説明する練習をするのがおすすめです。
初めての依頼で、緊張のあまり支離滅裂なこと言わないためにも・・・。
説明は、練習をすれば上手くなります。
ひとりの時に声に出して説明の練習をするだけでも効果があります。
依頼人への連絡方法の確認
依頼を受任したときに、必ず「依頼人への連絡方法の確認」をしておきましょう。
「電話なのか?」「メールなのか?」「何時くらいが都合がいいのか?」など、できる限り具体的に。
迷惑な時間帯に連絡をしていると、依頼人の不満がたまります。
そうなると、まとまる話もまとまらなくなりますからね。
それと、連絡方法をしっかりと決めておくと、業務の進捗状況も報告しやすくなります。進捗状況の報告は、その頻度でトラブルになることもあるので注意です。
依頼を完遂したら記録を残す
ひとつの依頼を完遂したら、必ず記録に残すようにしましょう。
依頼内容や必要書類、申請期間など、次に同じ依頼があったときに、それを見ればスムーズに行えるように。
今後、行政書士業を営んでいく上での財産になるので、大切に保管しておきましょう。
行政書士の実務で絶対にやってはいけないこと
それは、依頼人からの質問に対して次のことをすることです。
- 嘘をつく
- 曖昧に返答する
トラブルになるので、絶対にしてはダメです。
場合によっては、損害賠償を請求されます。
何か分からないことを依頼人から質問されたとしても、嘘をついたり曖昧に返答したりしないで、「調べて後日報告する」と言えば問題ありません。
それで、怒り出す依頼人もいませんからね。
実務を覚えるには依頼を受ける勇気が必要
最後に、実務をする上で一番必要なことをお話します。
それは、依頼を受ける「勇気」です。
私にも経験がありますが、実務経験がないと依頼を受けるのが怖いんですよね。分からないことを聞かれたら・・・とか、依頼を最後までやり遂げられるか不安・・・だったりと。
この記事にたどり着いた方は、実務経験に不安を持っている方が多いと思いますが、これは行政書士の多くが経験することです。
これを乗り越えないと、行政書士としてやっていけません。
ぜひ頑張ってください。