今回は、行政書士の業務のひとつである「民事法務」に関する記事です。
民事法務は争いに巻き込まれやすいのか?
という質問について解説します。
民事法務業務には次のようなものがあります。
- 各種契約書作成
- 内容証明作成
- 遺言・相続手続き
開業して間もない行政書士向けの記事です。
参考になれば幸いです。
民事法務は争いに巻き込まれやすいのか?
行政書士の業務には、大きく分けて「許認可」と「民事法務」がありますが、許認可よりは民事法務のほうが争いに巻き込まれやすいと思います。
許認可の場合は、依頼人と官公署の間に行政書士が入って手続きを進めますが、民事法務の場合は、争う可能性のある人と人との間に行政書士が入って手続きを進めますので、争いになる可能性は許認可よりは高くなります。
民事法務をメインにやっている行政書士と話すと、争いに巻き込まれたという話を聞くことがあります。
特に「内容証明」あたりは、送った先から電話があって、すごい剣幕で怒られたと言う話も聞きます。行政書士としては依頼人の意思を文章にしただけなのですが、行政書士が言ったことと勘違いしてしまう方がいるようです。
それと「相続」もよく聞きますね。依頼を受けた当初は、仲の良かった相続人が、途中でもめはじめてしまうようなケースです。
行政書士が争いに巻き込まれたらどうすればいいの?
行政書士は争いのある案件にかかわれませんから、弁護士へお願いすることになります。
下手に争いに行政書士が関わってしまうと、非弁行為で違法になる可能性があるので注意が必要です。
争いが起きた場合は、業際問題に注意しつつ、うまく弁護士へと引き継ぎましょう。
行政書士がやってはいけないこと
私の専門である相続手続きでは、途中から相続人が争い始めてしまうことがあります。
行政書士としては、その争いを何とかしようと頑張るとは思いますが、ここで行政書士として絶対にやってはいけないことがあります。
それは、依頼人を助けるために、他の相続人と交渉することです。
気持ちは分かりますが、こうした行為は非弁行為で違法となります。行政書士の資格では相手方との交渉はできませんので弁護士に任せるべきです。
そうしないと、交渉する相手方から訴えられることもあるので注意です。
弁護士への引継ぎが大変なことも
他の相続人との交渉や訴訟の問題となった時には、行政書士では対処できないので弁護士へ引継ぎを行うのですが、これが、思うようにいかないこともあります。
私は経験したことはないですが、途中で抜ける行政書士に対して、一部の相続人は「無責任」だと思うようで、いろいろ酷いことを言われるそうです。
行政書士としては、ここで感情的になると収拾がつかなくなるので、依頼人から何を言われても、感情的にならずに適切な対処をすることが必要になります。
争いに巻き込まれないためには?
行政書士として依頼を受けたときに、争いが発生したら行政書士が協力できなくなることを、しっかりと依頼人に説明しておく必要があります。
特に「行政書士が相手方と交渉できないこと」はしっかりと事前に説明しておいたほうがいいです。依頼人の中には、そういったことを当然にやってくれるものだと思っている人もいますから。
ちなみに私の場合は、依頼人と「業務委託契約」を締結するときに説明しています。契約書にも明記して、さらに口頭でも説明するようにしています。
民事法務をやるなら嫌な思いをする覚悟も必要
許認可でも嫌な思いをすることはあると思いますが、民事法務はその可能性が高くなるので、嫌な思いをする覚悟も必要だと思います。そうしないとメンタルがやられてしまいますから。
特に相続では「お金」や「被相続人への思い」が絡んでるので、相続人が感情的になりやすいです。関係者から、嫌なことを言われたことのある行政書士は意外と多くいます。
私の知り合いの中には、相続業務で嫌な経験をしたため、それ以降相続業務を一切やめ、許認可に専門分野を変えた行政書士もいます。詳しくは書けませんが、かなりハードな内容でしたので、自分が経験したらどうなるだろうと考えさせられました。
ちなみに、行政書士としてどんなに完璧な対応をしても、相続人がもめるときはもめます。そして、行政書士にも矛先が向くこともあります。
私が所属する支部に、相続専門で20年以上やっている行政書士がいますが、そんな経験豊富な先生でも、年に一度か二度はキツイことを言われると言っていました。
民事法務は、メンタルの強さも求められます。
今回は、ここまでです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。